仕事で大きなミスをしてしまった。取引先が激怒している……。
私たちビジネスマンにとって、胃がキリキリと痛むような「謝罪」の局面は、避けては通れない試練です。
そんな時、サラリーマンの聖地・東京新橋には、営業マンたちがこぞって買い求める「伝説のお詫びの品」があるのをご存知でしょうか。
その名も、「切腹最中(せっぷくもなか)」。
「えっ、お詫びに行くのに『切腹』なんて、火に油を注ぐのでは?」
一瞬そう思うかもしれませんが、実はこれ、知る人ぞ知る「許してもらえる手土産」として、長年愛され続けている名品なのです。
今回は、新橋の老舗和菓子店「新正堂(しんしょうどう)」が生んだ、このユニークすぎる和菓子がなぜビジネスの現場で最強の武器となるのか、その理由をご紹介します。
なぜ和菓子に「切腹」なんて名前を?
JR新橋駅から徒歩数分。「御菓子司
新正堂」という老舗の和菓子屋さんがあります。
一見すると普通の和菓子屋さんですが、なぜ「切腹」という物騒な名前の商品が名物なのでしょうか?
実は、このお店が建っている「場所」に深い理由があります。
ここは、忠臣蔵の発端となった赤穂藩主・浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)が切腹をした「田村右京太夫屋敷」の跡地にあたるのです。
3代目の店主が「この歴史的な場所を語り継ぐお菓子を作りたい」と考え、考案したのがこの最中。発売当初は「縁起でもない」と周囲から猛反対されたそうですが、店主の歴史への敬意と熱意で商品化されたという経緯があります。
単なるウケ狙いではなく、「歴史の重み」を背負ったお菓子なんですね。
なぜ「お詫び」に効くのか? 込められた2つのメッセージ
では、なぜこれが営業マンの「お詫びの品」として定着したのでしょうか。そこには、相手の心を解きほぐす2つの「粋なメッセージ」が隠されています。
1. 「腹を切ってお詫びします」という覚悟
パッケージやのし紙に書かれた「切腹」の二文字。
これを持参することで、言葉にしなくても「自分の腹を切る覚悟で、誠心誠意お詫びに参りました」という深い反省の意を伝えることができます。
2. はみ出たあんこ=「腹を割って話そう」
「切腹最中」の実物を見ると、多くの人がその形状に驚きます。
最中の皮が閉まりきらないほど、あんこがたっぷりと詰まっており、中身が完全に見えています。
これには、「腹を割って話しましょう」「隠し事は一切ありません」という意味が込められているのです。
実際に、怒り心頭で待っていた取引先の担当者も、これを出されると思わず、
「おっ、君も切腹しに来たか(笑)」
と吹き出してしまい、そこから場が和んで許してもらえた……という逸話が数多く残されています。ユーモアと誠意が、張り詰めた空気を変えるきっかけになるのですね。
ネタだけじゃない!味も「本物」だから愛される
もちろん、奇抜な名前だけで長年愛されるわけではありません。新正堂は大正時代から続く老舗。味も一級品です。
たっぷりと詰め込まれたあんこは、結晶の大きな純度の高い砂糖を使用しており、見た目のボリュームとは裏腹に甘さ控えめで上品な味わい。
そして何より嬉しいのが、あんこの中に「求肥(ぎゅうひ=お餅)」が入っていること。
パリッとした皮、風味豊かなあんこ、そしてモチモチの求肥。この三位一体の美味しさは、お詫び用としてだけでなく、自分用のおやつとしても最高です。
「美味しいものを食べて、どうか機嫌を直してください」という純粋な気持ちも、きっと相手に伝わるはずです。
四十七士にあやかった「義士ようかん」もすごい
新正堂にはもう一つ、忠臣蔵ファンを唸らせる名物があります。それが「義士ようかん」です。
なんと、赤穂浪士四十七士全員の家紋や羽織の柄がパッケージになっており、全47種類が存在します。「大石内蔵助」などの有名どころから、通好みの浪士までズラリと並ぶ様は圧巻です。
最中は賞味期限が短め(約1週間)ですが、ようかんは日持ちがするので、遠方への手土産にも適しています。
今回は、豆大福と生どら焼きも買ってみました。どちらもとてもおいしくいただきました。やはり、あんこが違うんでしょうね。リピート間違いなしです。
まとめ:新橋に行ったら「新正堂」へ
「切腹最中」は、単なる美味しいお菓子という枠を超えて、円滑なコミュニケーションを生むビジネスツールと言えるかもしれません。
ミスをしてしまった時の誠意の証としてはもちろん、「腹を割って話したい」大事な商談の手土産や、話題作りのお土産としても最適です。
新橋に立ち寄った際は、ぜひ新正堂を覗いてみてください。歴史とユーモア、そして確かな味が詰まった最中が、あなたのビジネスを助けてくれるかもしれませんよ。
【店舗情報】
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